※これは2015年にFacebookに投稿した記事をリライトしたものです。
私の道場の子供クラス。熱心に通ってくれていた5年生の男の子が、稽古前にお母さんに連れられて、私服で登場。お母さんの陰に隠れたその子の表情は暗い。
どうした?ケガでもしたのか?心配していると、お母さんから「しばらく稽古を休みたい」との意外な言葉が。
「みんなの目の前で投げられるのが、
やっつけられているようで恥ずかしくて嫌だ」
と涙ながらに訴えたのだとか。
合気道の稽古は、先生が門下生の前で何度か技を見せて、「はい、どうぞ~」と合図して、皆一斉に技をかけ合うという形で進む。
先生の受けを取る(技を受ける)のは一番弟子の仕事。一番弟子が投げられて、痛い思いをして、それを見た門下生が見て学ぶ。そういうものである。
先生の受けを取るというのは、一番弟子の証。彼もその事は分かっていたはずだけど・・・?
お母さんの「この子は勉強でも野球でも、合気道でも手を抜かない子なんです」という言葉でようやく腑に落ちた。
あぁ、そうか。
何でも手を抜かず、頑張りすぎちゃって、いっぱいいっぱいになっちゃったのね。
それで色々ガマンしてたのが一気に溢れ出ちゃったのね。
「そっか、辛かったな。気づいてやれなくて、ゴメンな」
そう言うと、5年生の男の子は堰を切ったように泣きはじめる。
胸がキュ~ンとなる。
思わず抱きしめそうになる。
でもそれはお母さんの仕事。
どうにかこらえて声を掛ける。
「武道には武の魂というものがある。
武の魂が満ち満ちて、ぶわーっと溢れ出て
稽古したくて稽古したくてたまらなくなる。
これを武魂充満というんだ。
武の魂が溢れ出たら、またおいで」
そう言うと、泣きながら頷いて、帰って行った。
怒られてばかりの社会人2年目の時、先輩社員に優しい言葉をかけられて、居酒屋で大泣きしたっけな。
家に帰るまで泣き続けて、当時妊娠中だった嫁さんに大和駅まで迎えにきてもらったっけ。
あの時もいっぱいいっぱいだったなぁ。
でもこの経験で5年生の男の子は強くなる。
強くて優しい漢になる。
きっと。
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